用語解説7「リスク」

3.7 リスク(risk)

定義:
不確かさの影響

解説:
リスクに該当する日本語がないため、最も分かりにくい用語の一つです。

注記1に、「影響とは、期待されていることから、好ましい方向又は好ましくない方向に乖離することをいう」とあるため、想定よりも悪い結果が起こることだけでなく、良い結果が起こることもリスクであるとしています。これは、ISO 31000リスクマネジメントで規定されている定義を引用しています。

リスクは、プラス・マイナスの概念を持つ用語なのですが、リスクはマイナスの影響をもたらすときに使われることが多いため、規格本文では、プラスの影響をもたらすものを「機会(opportunity)」とした経緯があります。

ISOマネジメントシステム規格で、「リスク及び機会」という表現を用いる趣旨は、マイナスの影響だけでなく、プラスの影響も考慮することを強調するためです。

以前、ISO 9001:2015の世界的権威の一人といわれているクラフト博士の講演を拝聴する機会があったのですが、そこでもリスクの質問が多くされました。クラフト博士の説明は明快で「リスクをsomething bad、機会をsomething good」とジェスチャーを交えて説明していたのが印象に残っています。「難しく考えずに、何か悪いこと、何か良いことが起こり得るならば、それらを評価し、必要に応じて管理しよう」ということでした。

リスクは将来起こり得る事象なので、何年先の未来を想定するか、によって認識できるリスクが異なります。半年先だと近すぎて対処すべきリスクを特定できないかもしれません。3年先を想定すれば、様々なリスクを特定できる可能性があります。

また、リスクの定義に関しては、規格毎に概念理解が異なることから、規格毎に固有のリスク
を定義することができるという例外的なルールがあります。

先ずは基本的なリスクの定義をおさえ、規格毎の定義を学習することをお勧めします。

※メルマガで配信したコラムを修正・加筆したものです