3 ISOマネジメントシステム共通要素のポイント①

3 ISOマネジメントシステム共通要素のポイント①

ISOマネジメントシステム共通要素(以下、ISOMS共通要素)は、9001、14001をはじめ多くのマネジメントシステムのベースになっています。
しかしながら、2012年に発行されて以来、ISOMS共通要素に関して学習する機会は少ないです。
弊社で主催する内部監査員養成研修でも本論ではないため、概要程度の説明に留めています。

ISOMS共通要素のポイントは6つあります。ボリュームが多いので2回に分けて解説します。

ポイント1
「組織を取巻く状況を把握し、リスクに取組むリスクベースマネジメントシステム」

中長期の視点で考えた場合、組織の最大のリスクは、経営環境の変化に対応できないことです。
世の中のトレンドを見誤り、顧客ニーズの探求を怠り、各種法令の改訂を気に留めずに組織を
運営すればどうなるか・・・。
失敗しない組織(=リスク回避のできる組織)になってもらいたいという願いが込められています。

そのため、箇条4では、組織の内外の課題の決定、顧客ニーズの決定を求めており、箇条6では、
対処すべき課題を決定することを要求しています。

ポイント2
「予防処置の発展的解消。形骸化した手順の要求ではなくMS規格の適用を通じて予防的な効果を得る。」

予防処置は1987年にISO9001の初版が発行されたときから要求されていました。
しかしながら、「予防処置を機能させている組織が少ない」という声が世界各国から寄せられました。
私の個人的な意見として、予防処置が機能しなかった理由は2つあると思っています。
一つは、予防処置を実施するための前提条件が分かり難かったため、どうしても「受動的」に取組む傾向
があったこと、もう一つは、サーベイランスや維持審査に備え「とりあえずやっておくか」という審査登録制度による弊害です。

予防活動(未然防止)は、主体的かつ組織全体で取組まなければ成果が出にくいです。
ISOMS共通要素ではリスク回避の観点から、予防処置の意図を戦略レベルに引上げ、中長期的な観点で取
組んでほしいという願いが込められています。そのため、予防処置の要求事項が削除され、箇条6で、組織の対処すべき
課題(リスク及び機会)を決定し、計画的に取組むことを要求しています。

ポイント3
利害関係者の見直し

組織を取巻く環境の変化についてはポイント1で説明しました。ここでは、利害関係者の考え方を整理
します。顧客(カスタマー)や最終消費者(エンドユーザー)のことを第一に考えたからといって、必
ずしも組織が成功する訳ではありません。

ここでは、組織の成長・存続のために、組織が耳を傾けるべき対象を明確にし、誤った経営判断をしな
いようにしてほしいという願いが込められています。

利害関係者は、顧客、地域社会、供給者、規制当局、非政府組織、投資家、金融機関、従業員など多岐
にわたります。いずれにせよ、経営判断が必要な項目です。

そのため、箇条2では、組織が耳を傾けるべき対象となる利害関係者を決定し、どのようなニーズ・期待
があるのかを決定し、マネジメントシステムに反映させることを要求しています。
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※メルマガで配信したコラムを修正・加筆したものです